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2024.6.5
「Free to Fly」 DCCA-131~133
2024.1.9
「Salvation」 DCCA-1126
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「OVERRUN」 DCCA-1088~1089
2020.6.17
「Collapsed Land」 DCCA-1030
MOVIE

INTERVIEW


AKi Special interview
曲って、3分間とかの限られた時間のなかに、いろんな想いを詰め込んで作るもの。
そういう儚さがあるかわりに、ものすごく強いものがあるからこそみんな惹かれていく。

──待望のソロ第二弾として、新作ミニ・アルバム『EPHEMERAL』とライブDVDが同時発売を迎えることになったわけですが、まず最新音源のほうを聴いて感じさせられたのは、1stアルバムの『ARISE』完成時とは、AKiさん自身のなかでの自信の大きさがもはや違うんじゃないか、ということで。

「確かに違うかもしれませんね。これを作るにあたって、特に意識して何かを変えようとしたつもりはないんだけども、やっぱり一度だけであるとはいえライブ(2015年2月3日/渋谷TSUTAYA O-EAST)をやったことが大きかったんじゃないかと思う。ある意味、自分が作ったものを、初めて自分自身としても“生”で体感する機会だったわけで。あそこに集まってくれたファンの方たちの景色を目にして、また新たに感じるものというのもあったし。まだどこか少しあやふやだったものの輪郭がそこでハッキリと見えたというか。こうなって欲しいな、と思っていたものがちゃんと具現化できたような感触があったんです。『ARISE』の時は、本当に何もないところから自分でも想像しきれないものを作ったなかで、“知らなかった自分と初対面”というような感じでもあったわけだけども、やっぱりそれを“生”でやるということに意味があったのかな。だからあのライブは、本当にやって良かったなと思う」

──その模様が収められた『A FEELING BEGINS TO ARISE』の映像を見てみても、すごくバンド感があって、とてもあの顔ぶれでの初ライブだとは思えない空気感が伝わってきます。

「そうですね。“はじめまして”の人は誰もいなかったんですけど、あの顔ぶれで音を一緒に出すのはもちろん初めてだったんで。正直、不安も期待も両方ともありました。でもやっぱりキャリアのある人ばかりなので、いざ演奏が始まっちゃうと自然と身を委ねられるというところまで持っていけてしまうというか。だからライブ自体、楽しんでやれたというのが大きかったですね」

──ギターが加藤貴之(兎)さんに佑聖(元THE KIDDIE)さん、そしてドラムが宮上元克(THE MAD CUPSULE MARKETS)さん。AKiさんが繋いだメンバーたちということになるわけですよね。

「ええ。元克さんは本当に頼りがいのある大先輩だし、加藤君とは一緒にアルバムを作りあげてきたわけで。佑聖君は『ARISE』には参加してないんですけど、みんなで4回だけリハーサルをやって、そのなかで各々にとってのサウンドや求められるものを見つけていくことになったというか。俺自身にとっても、楽器を弾きながら歌うっていうのは未知の領域だったんで。ただ、それでもアルバムを再現するだけじゃなく、“ライブだったらこうしたほうがいいんじゃないかな?”というふうに改めてアレンジを考えた曲とかもあったし。でも実際、自分でも何度もこの映像を見てみて思うのは、あの時に掲げてたことはやれたんじゃないかな、ということで。自分自身がソロをやるにあたって表現したかったことというのは、伝えられたんじゃないかな。アルバムをちゃんと表現しきって、自分でもそれをリアルなものとして掴みたかった。それがあの時、自分に課したテーマでもあったし、実際、それができたと思う。もちろん自分で作っておきながら“意外と難しいな、この曲”というのもあったけど(笑)」

──そんな重要な意味のあるライブが映像化されたのは、喜ばしいことですね。

「うん。意味のあることかなって、自分でも思います」

──そしてあのライブ以降、着々と新しい音源が作られていたわけですね?

「そうなんです。来年(2016年)、MUCCと一緒にやるツアーがあって、その話が夏になる前ぐらいに出てきていて。せっかくそんな面白そうなツアーがあるのに、前のアルバムだけ持って回るというのも嫌だな、と思ったんです。なにしろお客さんにとって『ARISE』は、その時点でもう“1年前のアルバム”ということになっちゃうわけじゃないですか。だったらもう、新しいものを作ってそれに臨んだほうが、観に来てくださる人たちにも楽しんでもらえるはずだと思えたし」

──公演本数も1本や2本じゃないですもんね。

「そう。本数自体も結構あるから“セットリストが一種類だけ”みたいな感じになってしまうと面白くないし、だからといって無闇にカヴァーを増やしてもしょうがないし。そこでミニ・アルバムぐらいのサイズ感というのはちょうどいいんじゃないかって思ったんです。それで6月にシドのツアーが一度終わってから、その間にシドのレコーディングをしつつも自分のデモ・テープも作り始めて。実際に録りだしたのはツアーが終わってからですけど、歌詞はツアー中のホテルの部屋とかでも書いてましたね。ちょうどあの時のツアーは、ライブとライブの間が1日空くような日程になっていたんで、大人しく部屋にこもっていろいろやってたんです。前回もそうですけど、基本的にシドで動いてない隙間で制作とかライブとかをやってます」

──今回のレコーディングは基本的にはライブと同じメンバーで行なわれていて、初回生産限定盤のほうに付いているDVDを見ると、とてもバンド然とした空気のなかで制作されてきたのがわかります。

「そうですね。よりバンド感が強くなってきてるというか。“ライブでもっとこういう曲が欲しい”という気持ちで作った曲もあるんですけど、基本的には“今、これをやってみたい”というのをそのまま曲にした感じで。なんかもう、ホントにそのままセットリストになるような曲順になってるんですよね。40分ぐらいのステージだったら、このままライブが成り立っちゃうと思う」

──1曲1曲についての解説はこの場では控えておくことにしますけど、そんな躍動感にあふれた作品であるにもかかわらず、『EPHEMERAL』というタイトルにはえらく儚げなムードが伴っています。

「短命だとか、一日だけの生命とか……そういう意味合いの言葉なんですよね。語源を探してみたんですけど、そもそもはギリシャ語かなんかで、ウスバカゲロウとかそういった短命な虫を指しているみたいで。単純にこの言葉の響きが気に入ったというのもあるんですけど、実際、曲を作っていて、儚さみたいなものをすごく感じたんですね。曲って、3分間とかの限られた時間のなかに、いろんな想いを詰め込んで作るものじゃないですか。そこにメッセージ性が込められていたり、言いたいことが盛り込まれていたり、ものすごく濃いものとして作っていくんだけど、同時にそれは限られた時間で終わってしまうものでもある。音楽って、バンドの音って、そういうものなのかなって感じさせられたんです。そういう儚さがあるかわりに、ものすごく強いものがあるからこそみんなが惹かれていく。そういう両極端なところがあるなって、こうして7曲を作って、歌詞も含めて改めて聴いた後に気付かされたんです。儚いからこそ、強くありたいというか。きっと自分自身、“この音を携えながらもっと生きていきたいんだ!”みたいなことを言いたかったんだろうなって、自分の作った曲や歌詞から感じさせられて。それでタイトルに相応しい言葉を探しているなかで、これがいいなと思ったんです」

──いわば、作り終えてからの自己分析の結論としてのタイトルなんですね?

「そうですね。そういうマインドだったんで。だからジャケットの写真も、まさに瞬間を切り取ったものになっているんです。あれは水を使って撮られたものなんですけど、次の瞬間にはもうまったく違った絵になってしまうもの、というか」

──なるほど。ところで今回、最後に収録されている“The Inside War”には大先輩がゲスト参加しているそうじゃないですか。

「そうなんですよ! Kenさんが力を貸してくださって。たまたまお会いした時に、“2枚目を作るんでしょ?ちょっと弾かせてよ。”と声を掛けてくださって。その後、改めてお願いしたら“いいよ”って、ふたつ返事で」

──前回はMUCCのミヤさんもゲスト参加していましたよね。AKiさん、先輩方に愛されてますね!

「いやー、恵まれてますよね(笑)。先輩方にそういうふうに言ってもらえるのはすごく嬉しいことだし。しかもKenさんは、年明けのツアーも参加することになっているんで」

──この曲の演奏中にKenさんが登場、というシーンにも期待したいところです。しかしこのツアー、何が起きるか予想しきれないところがありますね。

「どうなるんでしょうね。今から楽しみなんですけど、実はすでにMUCC先輩といろんな企画を考えていて。ツアー自体はもう単純に、“何かやらない?”というところから始まっているんですよ。ミヤさんが俺のライブを観にいらした時に、“対バンも面白そうだよね”と言ってくださったのが多分、最初の発端で、それがどんどん大きくなってきたというか。最近、俺もMUCCの曲に1曲参加させてもらったりして、なんか短い期間のうちにMUCCとの距離感がよりいっそう近くなった感じがあって、そこでいろんなものが生まれてきて。なんかこれは、ちょっとツアーとして展開してもいいよね、と」

──とても風通しのいい感じがしますよね。年末イベントとか夏フェス的なものではないんだけども、もっとフットワーク良く臨機応変に展開できるものというか。それこそ、思い立ったら毎年でもやれるような。

「うん。逆に将来的には、俺やMUCCがいなくてもこういうことがあってもいいのかもしれないし。とにかく今回は、こうして一緒にやるからには、というものをやりたくて。ただ一緒にライブをやるだけというんじゃなく、もっともっとひとつのイベントとして、みんなに楽しんでもらえるようなことをいっぱいやろうとしていて。この段階でひとつ言っておくと、まずMUCCとAKiというダブルネームみたいな名義で、このツアーのテーマ・ソングみたいなのを作ったんですよ。ベースもYUKKEさんと2人で、逹瑯さんも歌えば俺も歌う、みたいな。ミヤさんの自宅に行ってプリプロしたりしましたよ(笑)。各々のライブをやるだけじゃなく、そうやってちゃんと“MARBLE”という曲として残せるというのもあんまりないことだと思うし、きっとその曲自体、このツアーでしか聴けないものになるだろうし。実は公演パンフにその音源が付いてるんですけど、それが先行販売されることになっていて。つまり先行販売と、実際の会場でしか手に入らないわけです」

──そういうことであれば、やはり事前にそのテーマ・ソングをおぼえておいて、会場で一緒に歌いたいところですよね。そんなツアーについてもとても楽しみですが、最後にもうひとつだけ聞かせてください。今回の『EPHEMERAL』の制作を経て、AKiさん自身が再確認できたのはどんなことでしょうか?

「前回は、自分では開けたことのない引き出しを時間の許す限り開けまくって、そこから取り出したものをひとつひとつみんなに見せられるような形にしていったという感じだったんですけど、今回はもう本当に、“こういうライブがやりたい!”っていう7曲なんですよね。だから自分自身のなかにあるものを踏まえて、“今、シドっていうバンドのベーシストがステージの真ん中に立ってやるんだとしたらこの感じを貫き通していきたいんだ!”と言うものを形にできたというか。つまり、“俺って、こうなんです!”というもの。これを自分にとって、より揺るぎないものにしていきたいと思いますね」
(Text 増田勇一)
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